沈黙していて事態はよくなるでしょうか

ブライアン・コバート
(ジャーナリスト)

皆さん、こんにちは。ブライアン・コバートと申します。本日は市民の集い『戦争でしあわせになる子供はいない』に参加でき、非常にうれしく思っています。しかしながら、私が生まれた国、アメリカが起こしている戦争に対して常に頭を悩ませておられる方々がお集まりのところにやってくることは、アメリカ生まれの人間として大変恐縮しています。私の国の傲慢さ、無慈悲さに苦しむ人々に心からお詫びしたいと思います。

アメリカでは65%の子どもが自分の部屋に専用のテレビを持っているという調査結果ガあります。同じ調査では、小学校を卒業するまでに8000回のドラマの殺人シーンをテレビで見て、18歳になるまでには1万6000回の殺人シーンを見るといっています。これは、毎日2回以上の殺人シーンを見ることになります。しかもその数字には20万回以上の他の暴力シーンは含まれていません。

アメリカの社会に育った者として言えることがあります。アメリカの子どもたちは、小さいうちから話し合いや交渉によって紛争を解決するよりは、暴力によって紛争を解決することの方が良いのだと学んでいきます。そして、アメリカこそが世界で一番素晴らしく国であり、いかなる他の国もアメリカ程に尊敬に値する国はないと学んでいきます。さらに、「アイムソーリー」と言うことは、弱さの表れであるということを、社会のあらゆる場面で学んでいきます。そして、現在、アメリカでは中学生、高校生に対する軍部の募集活動、いわゆるリクルートがさかんに行われています。高校の校舎の中に軍の募集事務所があるというのは珍しいことではありません。制服を着た募集担当の軍人が中学校の昼休みにピザの箱を持ってやってきては、軍がいかにすばらしいか、国のために働くということがいかに意義のあることかを話をしていきます。

テレビで20万回の暴力シーンと1万6000回の殺人シーンを見て育ち、そしてアメリカがナンバーワンだと考えて、アメリカの子どもたちは18歳になると戦場にかり出されていくのです。

今、私は日本のこの地にいて、アメリカのこの状態をよそ事と思えません。アメリカの現状は、日本の予想図といえるのです。近い将来同じことが日本で起こるかもしれないと容易に想像することができます。そして、そのアメリカは日本の憲法9条を変えることを迫っています。

よその国の憲法を変えろという権利がどこの国にあるのかと思います。しかし、反発するどころか、アメリカからの干渉を追い風として、日本政府が利用しているように、私には思えます。

今、私たちは信頼関係を築くことよりも、いわゆる安全保障が優先される世界に生きています。また、戦争を挑発する腐敗した裕福な政治家たちを国際犯罪法廷に引き出すことよりも、終わりなきいわゆるテロに対する戦争が優先されている世界に生きています。憲法9条を持つ日本がこのような世界に追随していくことは、絶対に間違っています。何世紀にもわたって世界中のあらゆる文化の長老たちが私たちに警告してきた人類の危機に、私たちは今、立っているといえます。

その危機に立つ私たちは、未来に対して非常に重い責任を負っています。沈黙していることで事態はよくなるのでしょうか。目を閉じて眠っていましょうか。あるいは目を覚まして立ち上がり、破滅ではなく命のために声をあげましょうか。今こそ決断の時です。ぜひここにおいでのみなさんお一人お一人に行動を起こしていただきたいと切に願います。憲法9条を守り抜くことは、日本国内の問題であるばかりでなく、東アジアの国々、また世界中の国々にとって大きな影響をもたらします。5月中旬には隣の伊丹市にある第3師団から500人規模のイラクへの派兵があると聞いています。今、行動を起こさなくては、あっという間に後戻りできないところへ連れていかれてしまいます。

若い人に特にお願いしたいと思います。まず9・11の出来事がこの地球の未来に暗雲をかける脅威となったなら、その暗闇に光を投げかけるのは若い皆さんの力に他なりません。この集いに来られたということからさらに、次の行動に進んでいっていただきたいと思います。日本が戦争のできる普通の国になるのではなくて、戦争をしない普通の国になってほしいと心からそう思います。ありがとうございました。

参加者とのやりとり

会場: 宝塚で、一致バラばらの会というふざけた名の会をつくって、気楽に活動しています。ブライアンさんは、日本の国に来てアメリカ合衆国政府の批判をされたわけですが、そうすることによってアメリカ合衆国政府から、CIAから追跡されたり逮捕されるようなことはないのでしょうか。ちょっと心配します。というのは、日本の国では1945年以前には戦争反対、天皇制反対と言っただけで逮捕され、究極には死に至るような状態になりましたので、そういう疑問を持ちました。それから小森先生に。昭和天皇は戦争責任を取らないばかりでなく、ナチスの文化国家などというイデオロギーまで使ったわけですけど、その天皇が日本国憲法の第1章に居座りました。第9条を考える場合に、ぼくはいつも思うんですけど、第1章との関わりを考えなあかんと思います。第1章の天皇と9条は矛盾している。9条を守るということは、第1章の天皇に反対するということでなければならないと思うのですが、その辺も話していただきたい。

コバート: アメリカで活動していても、日本で活動していても、世界の他の場所であっても、アメリカ政府を批判したり、平和活動をしている場合にはアメリカ政府によって、監視されていると思います。それは分かっていることなんですが、それにもかかわらず私は活動をしているわけです。しかし、これは日本でも同じことで、日本人の方がそのような活動をしていても警察や当局によって監視されていると思います。ただ、私は直接にそのような圧力は現在感じていません。また、東京の大使館や大阪の領事館でもCIAの方々がいるのは分かっています。ただ、私はこの活動を続けていかなければならないと思っています。監視されようとも続けていこうと思っています。

会場: 劣化ウラン弾を禁止するキャンペーンをやっています。コバートさんに質問ですが、アメリカでの平和教育というのは、どういうことをこれから理想としていくべきか、マスコミはそれをどういう風に伝えるべきかお聞かせ下さい。

コバート: 平和教育についてのご質問をいただきましたが、これは全ての国における学校において必要なものと認識しています。そして理想ですが平和教育は暴力などの情報にさらされる前の、初期の状態で教育されるべきだと思っております。現実は全く違い、アメリカにおいては平和教育はほとんど存在しません。そしてマスコミの役割については、私は主流のマスコミで働いた経験があり、またフリーとして現在は仕事をしていますが、マスコミはもっと積極的にその役割を果たしていかなければならない。そして平和の声をもっと聞いていかなければならない。もし、平和を求める声をもっと聞いていたなら、アフガニスタンやイラクの戦争は起こらなかったと思います。一つの声を聞くだけでなく、全てのそういった声を聞くことから始めるべきだと思っております。そしてマスコミの役割の一つに、声無き声を記録していくことがあると思います。そして、アメリカの大きなメディアの雑誌の中でも言われている職業倫理ですが、メディアには責任がある。それは、力のあるもの、豊かなものの声を取り上げていくだけでなく、声無き声を聞いていくことが大切だということです。