亡命中の編集者、日本・南アフリカ関係を批判
(EXILED EDITOR CRITICIZES JAPAN-S. AFRICA RELATIONS)
長南アフリカの元新聞編集者、ドナルド・ウッズ氏が日本で一週間に渡って展開してきた反アパルトヘイトキャンペーン活動を本日終えた。彼の著書は1987年のリチャード・アッテンボロー卿監督作品、『遠い夜明け』の原作となった。南アフリカ人種隔離政策の辛口批評家であるウッズ氏は、黒人リーダー、スティーヴン・ビコの拘留中での死亡に異議を唱えたことで活動の制約を課され、南アフリカから逃亡、1978年から英国で亡命生活を送っている。彼の祖国では、彼について書くことは今も禁じられているが、ジャパンタイムズでは、大阪のブライアン・コバート記者との独占インタビューを抜粋し掲載する。
ウッズ氏とのインタビューはP・R・ディートリヒセン駐日南アフリカ総領事代理の書いたジャパンタイムズ6月1日、「編集者への手紙」についての彼の意見から始まる。
ジャパンタイムズ(以下JT):手紙のことから始めましょう。
ドナルド・ウッズ(以下DW):ディートリヒセン総領事代理が、南アフリカ政府は40年と4日続く現政府の下、彼曰く「今も残るこの国の欠点」の排除を迅速に行っている、と主張していますが、私はなぜ彼がそのようなことが言えるのか理解できません。世界最悪の人種差別制度であり、国民の85パーセントの権利剥奪を「欠点」という言葉で表現することはできません。
ディートリヒセン氏やその他の南アフリカ政府の役人たちがアパルトヘイトを、まるで残念な過失のように話していますが、アパルトヘイトは多数の複雑な制約や障害で個人の発展を妨げるものであり、それらがアパルトヘイト法を作り上げているのです。
JT:米国合衆国議会がプレトリア=南ア政府に対する、新たな、より厳しい制裁を話し合っています。それについてどう思われますか。
DW:制裁は当然です。これまでの10年間、制裁を課すために運動してきた者としては、米国が制裁の先導をしてくれるのをうれしく思います。米国議会は11月の大統領選で誰が勝とうと、より強い制裁が導入されると明らかにしています。
JT:南アフリカの反応は、鉱物の採掘を抑えるという、かなり強気な発言がみられました。どのぐらい抑えてくると思われますか。
DW:現政権(アフリカーナー国民党)下の過去40年の南アフリカの歴史をみると、南アフリカがこのような大げさな脅しをしていても、危機に陥った時には実際にその脅しを遂行することはありませんでした。制裁に関しても同じことがおこるだろうと思います。私は南アフリカ政府が前向きな態度を示し、南ア史上初の民主的な憲法をつくるために黒人多数派のリーダーとの交渉の席に着いてくれることを望んでいます。
JT:日本は南アフリカとの貿易量が増えている国であるわけですが、このような状況における日本の役割は、ウッズ氏の目から、また南アフリカ人の目からみて、日本はどのように映るのでしょうか。
DW:私は東京で、南アフリカと貿易をしている大手企業と話し、彼らが南アフリカから撤退し、貿易関係を南アフリカ周辺のフロントライン諸国に移転させれば、それが彼ら自身の利益になる上に、正しい行動だと指摘しました。
日本企業は彼らの卓越した製品ゆえに世界の羨望の的となっていますが、もしそのブランドイメージに傷がついたら、不買運動が起こるなど、損失を出し始め、南アフリカと関係を続けることで、その損失額はさらに大きくなるでしょう。
JT:(日本企業に与えられた)「名誉白人」という肩書きについてどう思われますか。
DW:ひどい侮辱だと思います。このようなひどい侮辱に対して日本人がそれほど激怒していないことに驚きました。
JT:スティーヴ・ビコについて少しお話ししたいです。著書『ビコ』の中でかなり詳細に書いておられますが、彼についておおまかに教えていただけますか。
DW:はい。亡くなった時点で、スティーヴン・ビコは政治的視野をかなり広げていました。彼はアフリカ民族会議(ANC)とパン・アフリカニスト会議(PAC)の主導者と話をしていました。彼らの運動と「黒人意識運動」を団結させる目的のためにです。
もしかすると、南アフリカ政府がビコを非常に恐れた理由はこのことかもしれません。彼らはビコが大きな黒人運動を結束させる要因になると考えたのかもしれません。ビコは実年齢以上の知恵を備えた非常に知性豊かな人物でした。私は彼よりもずっと年上でしたが、いつも自分より年上の人と話しているように感じていました。
JT:あなたは著書の中で、ビコは今まで出会った中で最も偉大な人物だと書かれていますね。
DW:まさにその通りです。おおげさに聞こえるかもしれませんが、本当にそうなのです。彼は今日の解放運動において、非常に良い意味で指導的役割を担っていたはずですから、彼が殺されたことは大変な悲劇です。
JT:あたなの著書と映画『Cry Freedom 遠い夜明け』が南アフリカ政府のアパルトヘイト制度に影響を与えたことについてどう思われますか。
DW:この映画によって疑いようもなく、アパルトヘイト問題における世界中の関心が高まり、日本を含め多くの国々で解放運動の信念への支持が急激に広がりました。私はこの理由として、過激派やテロリストのレッテルを貼られる可能性が全くない白人の穏健派によって、この話しが語られたことにあると思います。
過去に南アフリカ政府はアフリカ民族会議(ANC)に属するような人々にテロリストの烙印を押して中傷しようとしました。しかし、アフリカ民族会議(ANC)のような組織は今や以前にはなかったような高い信頼性と社会的地位を獲得しており、ついに彼らの本質的な立場は穏健派として、正しく理解されているのです。
JT:あなたは著書の中で白人政権はそろそろ崩壊するだろうとおっしゃいました。
DW:予想よりも長く持ちこたえています。しかし一方で、白人政権が言っているように、彼らがしっかりと主導権を握っていると思い込むのも間違いだと思うのです。私たちが今、目の当たりにしているのは、白人支配という一巻きの糸が解け始めているところなのです。糸の端が少し緩くなってきているのです。ボータ(P・W・ボータ南アフリカ大統領)が17の非暴力組織を禁止にし、報道機関の口を封じなければならないと感じたのは、それが理由の一つなのです。完全な主導権を握っている政権なら筋の通った反対意見を必死で封じようとする必要はありません。
JT:最後に、日本と欧米の読者に向けてアドバイスを頂けますか。
DW:そうですね。まず日本はこれまでの30年間で経済大国としての地位に上り詰め、世界を仰天させた、ということを言いたいです。
そして、今、その日本に人権の問題に目を向ける時が来ており、物質的な偉業より、人権を優先させる国だと思われるように心がける時なのだと感じています。