シリーズ 第二の都市:大阪が動きをみせる
(Second Cities: Osaka Makes Its Move)

日本第二の都市、大阪は、アジアでのビジネスを巡って東京と対抗しようと準備を進めている。ブライアン・コバートがその様子をレポートする。


昨年11月、日本第二の都市である大阪市の職員たちは、大胆にも競合相手の本拠地で、前例のないプロモーションイベントを開催した。その目的は300人の観客に、ほとんど知られていなかった大阪弁の歴史的意義を知ってもらうことだった。古くから日本の商業と貿易の中心地として知られる大阪では、商人の生々しい、荒っぽい響きの方言が使われてきた。この珍しいイベントの開催地が海外の都市ではなく、隣人の東京であるという点は、主催者の大阪市にとってどうでもよいことのようだ。彼らが言いたいことはこうである。No. 2に気をつけろ。

大阪は全権を握る東京に挑戦しようとして、その勢力圏を飛躍的に広げているのだ。この目標は、多くの観客を期待と不安の渦に巻き込んでいる。

来年は大阪にとって大きな変革の年になりそうだ。その核となるのは、大阪湾南部の沖合5キロにある関西国際空港だ。

関西新空港は1994年夏、日本初の24時間空港として開港し、日本の旅行形態全体に革命をもたらすと期待されている。国内外から3000万人以上の旅行者が訪れ、年間100万トン以上の貨物を扱う空港として、その取扱量は既存の大阪国際空港の50%増となる見込みだ。

このような背景から、経済界は、新空港に「日本の玄関口」として期待を寄せている。大阪市と大阪府がずっと待ち望んできた経済成長の突破口になるだろうと願いを込めて。すでに、数え切れないほどの新しいオフィスビルやショッピングセンター、公共交通機関の拡張計画が、空港のデビューに合わせて急ピッチで進められている。

しかし、空港の開発は全てが順調というわけではなかった。一時は建設が1年以上も遅れたこともあった。また、現在は緩和されているが、埋立地に建設された滑走路が沈下するのではないかという心配もされていた。そして、バブル経済崩壊後の日本では、民間企業が1兆円(85億米ドル)のプロジェクトに、さらにこれ以上の資金援助をすることは困難であり、結局のところ無用の長物になるのではないかという噂も囁かれている。

しかし、おそらく大阪で最も影響力のあるビジネスリーダーである、関西経済連合会(関経連)の宇野収会長は楽観的な見方を変えていない。「現実的な方法ですべて解決すると思います」「これが私の希望です」と彼は言う。

問題なのは空港だけではない。空港に続いて湾岸地域の開発プロジェクトが目白押しだ。特に、2兆2000億円(188億米ドル)投じたテクノポート大阪は、その人工島の中に、55階建ての大阪ワールドトレードセンタービルディング、関西空港と連結した大阪エアカーゴ・ターミナル、通信・ハイテク施設などが建設予定である。

また、1200億円 (10億2500万米ドル)をかけて、アジア太平洋トレードセンターも建設中である。しかし、水都大阪は、この建設は、まさに適切な目標に向かっていると考えている。「東京は長い間、西洋との接触を優先してきましたが、大阪は何世紀にもわたる東洋との貿易関係をフルに生かすつもりです」と宇野氏は言う。

ソウル、香港、シンガポール、バンコク、クアラルンプール、マニラ、ジャカルタとは既に強固な「ビジネスパートナー都市」の提携を結んでおり、上海とは「姉妹都市」、韓国の釜山とは「姉妹港」である。関西圏の輸出は日本の総輸出額の3分の1近くを占め、驚くことに日本の対中輸出の30%〜40%を占めている。

しかし、かつての日本の政治、商業、文化の中心地であった大阪にとって、全てが順調に進んできたわけではない。1600年代初頭には、東京にその権力基盤を追い抜かれ、第二次世界大戦後は灰の中から立ち上がったが、かつての姿の形骸化でしかなかった。

今日、大阪と東京の長年のライバル関係の名残は、株式からスポーツに至るまで、あらゆるものに見られる。大阪取引所(OSE)は、1949年の設立当初は無名に等しかったが、今では世界第4位の売買代金を誇る世界的な大取引所となった。アジア諸国企業が関西の財政再建に重要であると期待される中、大阪取引所は、それらの企業の上場に力をいれることで、他と一線を画したい考えだ。

しかし、このように成功を求める大阪が辿っているのは、問題を抱える首都東京が歩んでいる道と同じではないだろうかと、一部のアナリストは疑問を抱き始めている。

東京の混雑が限界に達している今、大阪は拡大を続けている。大阪はすでに、東京に次いで、世界で最も物価の高い都市としての地位を獲得している。

その上、東京の権力者たちは、省庁の地方移転という、かつては考えられなかったことを検討しており、その候補地に大阪も含まれている。皮肉なことに、このような政治的負担から解放されることが、大阪の長所とされてきたのだが。

大阪市の職員は東京の失敗を回避することで、大阪がその地位を確立できると依然として確信している。大阪市経済局の藤本司氏は言う。「我々は、大阪は世界の一都市だと考えています。大阪は世界経済の中にいるべきであり、東京と比べるべきではありません」